
朝起きた時は「おはようございます」、夜寝る前には「おやすみなさい」というのが、古くからの日常生活のエチケットである。また、戸外で知人にあえば、「こんにちは」「さようなら」などと言葉を交わしあって、お互いに心を通わすきっかけをつくる習慣は、これまた昔から、どこの国でも行なわれている人間同士の自然な親しみ方であろう。
これを挨拶という。挨拶は、心を開いて相手にせまる、いわば暮らしの潤滑油みたいなもので、言葉だけにかぎらないが、人と人のふれあいをもとうとする場合に、欠かすことのできない儀礼的な動作である。別に挨拶がなくてもお互いに困ることはないが、社会的動物として生きる以上、油のきれた機械がいやな音を立ててきしむように、挨拶を忘れると、人の心も荒れて気まずくなることも事実である。
世の中が、この頃特にギスギスして住みにくく、隣近所のつきあいや家族の親愛感がうすれたように見えるのも、多くはこの挨拶の欠如からくるのではなかろうか。
挨拶の語源は、元来、主として禅僧の間で、師匠が弟子と押し問答でしてその者の修行や悟りの深さを試す意味に用いられ、転じてお互いに言葉を交わすなど様々な使い方をされるようになった。
いずれにせよ、日常の暮らしを円滑にするには、まず挨拶から始めるにかぎる。
※これらは、「えっ、これが仏教語?ー日常生活の中の仏教語ー宝田正道著」から引用していますが、HP掲載用文章に変更しております。