
ひらがなを、重ね字なく七五調四句に並べて読みこんだ四十七字の歌を、最初の三字「いろは(伊呂波)」で総称させて「いろは歌」という。末尾に「ん」あるいは「京」という一字を加えて四十八字とし、昔は手習いの手本やカルタ遊びの読み札として用いられた。また、物の順番を示す一連番号の代りに、ABCや五十音図と同様の使い方をされたこともある。
しかし、戦後の国語改革などで、「ゐ」や「ゑ」という字が使われなくなったせいもあって、この歌を諳んじて言える若者は少なく、まして正しく書ける人や意味を知る人は、だんだんと減る一方である。学校でも教わることがほとんどないらしいから、無理もない。
元来は、「いろはにほへとちりぬるをわかよたれそつねならむうゐのおくやまけふこえてあさきゆめみしゑひもせす(ん)」というのであるが、漢字を混ぜて書くと、「色は匂えど散りぬるを我が世たれぞ常ならむ有為の奥山今日越えて浅き夢見じ酔いもせず(ん)」となる。これでも旧かな遣いで難しいかもしれないが、要するに、世の中すべて移り変わるのが原則だから、物に執着する迷いをすてて生きよ、と教える『涅槃経』の四句を和訳した仏教的人生訓である。弘法大師の作とも伝えられるが、その真偽はともかく、覚えておいて損のない歌である。
※これらは、「えっ、これが仏教語?ー日常生活の中の仏教語ー宝田正道著」から引用していますが、HP掲載用文章に変更しております。