
得意の頂点にあって夢中になっている心理状態を「有頂天」という。人によって喜びのてっぺんには、いろいろ差異があるけれども、それぞれがこれ以上ないという幸福感に浸っているありさまを、「有頂天になっている」というのである。
これには仏教の宇宙観がもとになっている。
仏教では、天上界を欲界・色界・無色界の三段階に大きく分けて考える。欲界はまだ欲望をたちきれない人間を含めて六天、色界は清浄で欲は離れているが、まだ物質にとらわれることのある世界で、十七天、その上に無色界の四天を数え、都合三界二十七天に分けられる。このうち、色界の最高を色究竟位天といい、ここを有(物質)の頂にある天、すなわち「有頂天」とする。
しかし、無色界のように、有を超越した精神のみの世界とちがい、色界に属する以上は未解脱の境涯であるから、修行を怠ったりすると、たちまち転落してしまうこともある、という。
一説には、天の最も高いところを「九天」とし、堕落してそこから転落することを「九天直下」と称する。世間で様子が急に変化して物ごとの結末がつくことを「急転直下」と書くが、あるいは「九天直下」から転訛したのかもしれない。
※これらは、「えっ、これが仏教語?ー日常生活の中の仏教語ー宝田正道著」から引用していますが、HP掲載用文章に変更しております。