
「お達者でなによりですね」
とか、あるいは、
「あいつは口も達者だが、芸もうまい」
などという。
達者とは、すなわち、あることに熟達して上手なことや、何事にも抜目がなく、転じて健康状態も優れていることなどに使われている。
しかし、本来は、仏道に深く達した者、あるいは真実の道を究めた人、ものの道理を本当にさとった人などをさしていった。学問や技芸の、ある方面にきわめて秀れた人や人生を達観した人を「達人」と呼ぶが、「達者」とは姉妹語と考えていいだろう。
ただ、「達者」には、いつの頃からか、人の身体的部分が十分に機能している健康の意味が加わるようになり、また、悪がしこく抜目のない、ずるさの意をあらわす場合にも使われるようになった。
これは、何事も達者になるには、相当の年月の修行が必要で、それには終始身心とも健在でなければつとまらないところから、自然健康の意味が加えられたものであろう。また、奥義に達した者の中には、慢心して悪知恵を働かすやからも出たので、ずるさの面にも使われる言葉となったのではなかろうか。
※これらは、「えっ、これが仏教語?ー日常生活の中の仏教語ー宝田正道著」から引用していますが、HP掲載用文章に変更しております。